2009年 10月 16日
祭りの夜に「一通り」 Hさか
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祭りの日の夕刻。まだ日の高いうち。こそこそと抜け出す。召集令状につられてやってくる閣下とジジさんとの待ち合わせ場所に向かう。ふふふ。目指すはJが丘。いつものように私は歩く。ま、たった三〇分ほどなのだが、多少心の免罪符となるからだ。
Jが丘の駅前は人でごった返している。一番最初に現地に着いた私はタクシー乗り場のあたりの柵に浅く腰掛けて待ち人の出現に目を凝らす。しかし世の中にはいろいろな待ち合わせがあるものだ。それを見ているだけでちょっと面白い。携帯電話がなかった頃の待ち合わせは何かもうちょっと緊張感があったなぁなどと昔を思い出しながら、久しぶりに会う同級生、これから仕事に行くのだろうバンド仲間、サークルの仲間なのか年輩のカップルなどの待ち合わせシーンを見ながら時間をつぶす。
やがて閣下が現れ、しばし談笑しているとあらぬ方向からジジさんがやってくる。
「あれ、歩いてきました?」
「いや、改札を間違えちゃって」
なるほど。
面子が揃ったところで、Hさかに向かう。私が歩いてきた時には中に明かりが灯り、あの若い兄さんが何やら準備している風情だったので、何も疑わずに向かったのだが、ややや、真っ暗ではないか。三人で呆然と立ち尽くす。あまりJが丘に馴染みのないお二人は、その間にキョロキョロとこのオヤジゾーンを目視で確認している。暫く待てば開くかも知れないと思い、Kとりや、その並びのどうしようもない店など、まわりの店の簡単な説明などをして時間をつぶす。
が、誰一人この店を訪れようとする客がいない。う〜む。間違えたな、開店時間を。携帯で検索してみると、然もありなん、我々が早すぎたのだ。さて、どこかで時間をつぶさなくては。
「餃子でビールでも飲みながら待ちますか」
とお二人を誘って、D蓮へ。
餃子二人前と瓶ビール、確か三本ほど。突っ走れないもどかしさに停滞気味な三人オヤジ。
「こうなったら、順番を変更しましょう。K田へまず行きましょう。もうそろそろフライングが始まってると思いますので、ちょっと見てきますね」
私がK田の前に戻ってみると、電飾に火が点り、正に暖簾を潜ろうとしているオヤジがいるではないか。今日は三人なので、最初から二階に回されてしまうという意味ではそんなに焦っても仕方ないのだが、気持ちが急くのだ。足早に引き返し、カウンターにへばりついている二人にGOサインを出す。
「K田には二つ引き戸があって、どちらもきちんと締めてくださいね」などとにわかレクチャーをしながら向かう。
店に入ると女将さんはすぐに分かったみたいだけど、三人だと告げると、万人に等しく告げるように「お二階へどうぞ」とな。K田の二階は久しぶりだなあ。
ビールを飲み、H鷹の燗を傾ける。かわはぎの刺身(薄造りではない)、鰹刺しなどに始まり、三つ葉のお浸し、唐辛子味噌、鴨串(塩)、射込みトマト、自家製薩摩揚げ、そして秋刀魚団子の椀などを楽しむ。いやぁ、よいよい。甘露、甘露。
宴も酣ではあったのだが、閣下がご退席の時間となった。う〜む、Hさかは叶わぬのか、閣下。階下にてお会計。するとご主人がいつもの笑顔で
「今日はどうも相すみません、二階になってしまいまして」と一言挨拶をしてくれる。
「久しぶりに二階に上がって、それなりに落ち着きましたよ」
「そうですか、ありがとうございます。また、いらしてくださいまし」
「えぇ、また伺います」
路上に出ると、閣下が名残惜しそうだ。ジジさんと私は心も体もHさかへと落ちていく。閣下はブラックホールに吸い込まれてなるものかと、用事をすませに駅へと向かう。ちょっとだけでも寄っていけばいいのに、と酒飲みの悪魔の誘惑を振り切りながら。
私とジジさんは入り口そばのカウンターに陣取り、ビールをもらって一通り(からくり、きも、かしら、かわ)を頼む。一通りとは何か、とか、キャベツやトマトなどの用語説明をしながら飲んでいると、私の携帯が鳴るではないか。ややや、祭りの宴会からそろそろ戻って来いというお小言か。と思ってディスプレイをみると、ニヤッと笑っているかのように「閣下」の文字が浮かびあがっている。あれれ、と思って店の外で電話に出ると、
「閣下です」
「どうもぉ〜」(そろそろ酔っぱらってきているのだ)
「まだ、Hさかにいます?」
「もちろん」
「小閣下を連れてこれから行ってもいいですかね」
「どうぞどうぞ。お待ちしてます」
「お店も大丈夫です?」
「ええ、以前、小さい女の子を連れて来ていたお父さんがいましたし、大丈夫ですよ」
店に戻り、ジジさんに閣下カムバックを伝える。
ビールも終えて、私はいつものように焼酎ストレートに切り換える。ジジさんもそれに乗る。
「効きますよ」
「それでいきましょう」
焼き物は、私の好きなからくり塩とかしら塩を追加して、ストレートを飲み始める。
クゥーッ、きついぜ。
やがて、マントを翻しながら閣下再登場!
その脇に小閣下が、どこへ連れてこられたのかと警戒心いっぱいでこちらをみている。
後で聞いたところによると、私とジジさんはK田を出た時とは明らかに様子が違っていたそうだ。
一言で言うなら、できあがっちまったのである。
なもんで、小閣下の頭をぐりぐりしながら、「頑張れよ」などと話しかけまくっていたのだ。
小閣下の大顰蹙を買ったことは想像に難くない。
しかしまだまだ、酔った大人に逆らえるほど、彼は摩れちゃあいないのだ。
小さく頷きながら、空腹を満たすべく鰻の串を頬張っていたのだ。
酔ったおじさんは、ここにはご飯がないことを伝えるのを忘れていた。
食べたければコンビニで買ってきて持ち込むのがここのルール。
小閣下は、蒲焼きの大をご飯なしで食べるのだった。
もしかしたら私はほとんど一杯と同じ量の、「焼酎半分」をお代わりをしたかも知れない。う〜ん、錯覚か。
そうそう、途中でメールがあって知ったのだが、
祭りの方の宴には、サッカー元日本代表のM園氏が来ていたらしい。大人はちょっと興奮気味の様子。
そんなことを思い出し、小閣下を従えた我々はタクシーで何十人もの酔っぱらいが待つ祭りの宴に向かったのである。
そこで待っていたのは、K田にいる時に電話をくれた、怒りに震えた親分だった。
ごちそうさま。
Jが丘の駅前は人でごった返している。一番最初に現地に着いた私はタクシー乗り場のあたりの柵に浅く腰掛けて待ち人の出現に目を凝らす。しかし世の中にはいろいろな待ち合わせがあるものだ。それを見ているだけでちょっと面白い。携帯電話がなかった頃の待ち合わせは何かもうちょっと緊張感があったなぁなどと昔を思い出しながら、久しぶりに会う同級生、これから仕事に行くのだろうバンド仲間、サークルの仲間なのか年輩のカップルなどの待ち合わせシーンを見ながら時間をつぶす。
やがて閣下が現れ、しばし談笑しているとあらぬ方向からジジさんがやってくる。
「あれ、歩いてきました?」
「いや、改札を間違えちゃって」
なるほど。
面子が揃ったところで、Hさかに向かう。私が歩いてきた時には中に明かりが灯り、あの若い兄さんが何やら準備している風情だったので、何も疑わずに向かったのだが、ややや、真っ暗ではないか。三人で呆然と立ち尽くす。あまりJが丘に馴染みのないお二人は、その間にキョロキョロとこのオヤジゾーンを目視で確認している。暫く待てば開くかも知れないと思い、Kとりや、その並びのどうしようもない店など、まわりの店の簡単な説明などをして時間をつぶす。
が、誰一人この店を訪れようとする客がいない。う〜む。間違えたな、開店時間を。携帯で検索してみると、然もありなん、我々が早すぎたのだ。さて、どこかで時間をつぶさなくては。
「餃子でビールでも飲みながら待ちますか」
とお二人を誘って、D蓮へ。
餃子二人前と瓶ビール、確か三本ほど。突っ走れないもどかしさに停滞気味な三人オヤジ。
「こうなったら、順番を変更しましょう。K田へまず行きましょう。もうそろそろフライングが始まってると思いますので、ちょっと見てきますね」
私がK田の前に戻ってみると、電飾に火が点り、正に暖簾を潜ろうとしているオヤジがいるではないか。今日は三人なので、最初から二階に回されてしまうという意味ではそんなに焦っても仕方ないのだが、気持ちが急くのだ。足早に引き返し、カウンターにへばりついている二人にGOサインを出す。
「K田には二つ引き戸があって、どちらもきちんと締めてくださいね」などとにわかレクチャーをしながら向かう。
店に入ると女将さんはすぐに分かったみたいだけど、三人だと告げると、万人に等しく告げるように「お二階へどうぞ」とな。K田の二階は久しぶりだなあ。
ビールを飲み、H鷹の燗を傾ける。かわはぎの刺身(薄造りではない)、鰹刺しなどに始まり、三つ葉のお浸し、唐辛子味噌、鴨串(塩)、射込みトマト、自家製薩摩揚げ、そして秋刀魚団子の椀などを楽しむ。いやぁ、よいよい。甘露、甘露。
宴も酣ではあったのだが、閣下がご退席の時間となった。う〜む、Hさかは叶わぬのか、閣下。階下にてお会計。するとご主人がいつもの笑顔で
「今日はどうも相すみません、二階になってしまいまして」と一言挨拶をしてくれる。
「久しぶりに二階に上がって、それなりに落ち着きましたよ」
「そうですか、ありがとうございます。また、いらしてくださいまし」
「えぇ、また伺います」
路上に出ると、閣下が名残惜しそうだ。ジジさんと私は心も体もHさかへと落ちていく。閣下はブラックホールに吸い込まれてなるものかと、用事をすませに駅へと向かう。ちょっとだけでも寄っていけばいいのに、と酒飲みの悪魔の誘惑を振り切りながら。
私とジジさんは入り口そばのカウンターに陣取り、ビールをもらって一通り(からくり、きも、かしら、かわ)を頼む。一通りとは何か、とか、キャベツやトマトなどの用語説明をしながら飲んでいると、私の携帯が鳴るではないか。ややや、祭りの宴会からそろそろ戻って来いというお小言か。と思ってディスプレイをみると、ニヤッと笑っているかのように「閣下」の文字が浮かびあがっている。あれれ、と思って店の外で電話に出ると、
「閣下です」
「どうもぉ〜」(そろそろ酔っぱらってきているのだ)
「まだ、Hさかにいます?」
「もちろん」
「小閣下を連れてこれから行ってもいいですかね」
「どうぞどうぞ。お待ちしてます」
「お店も大丈夫です?」
「ええ、以前、小さい女の子を連れて来ていたお父さんがいましたし、大丈夫ですよ」
店に戻り、ジジさんに閣下カムバックを伝える。
ビールも終えて、私はいつものように焼酎ストレートに切り換える。ジジさんもそれに乗る。
「効きますよ」
「それでいきましょう」
焼き物は、私の好きなからくり塩とかしら塩を追加して、ストレートを飲み始める。
クゥーッ、きついぜ。
やがて、マントを翻しながら閣下再登場!
その脇に小閣下が、どこへ連れてこられたのかと警戒心いっぱいでこちらをみている。
後で聞いたところによると、私とジジさんはK田を出た時とは明らかに様子が違っていたそうだ。
一言で言うなら、できあがっちまったのである。
なもんで、小閣下の頭をぐりぐりしながら、「頑張れよ」などと話しかけまくっていたのだ。
小閣下の大顰蹙を買ったことは想像に難くない。
しかしまだまだ、酔った大人に逆らえるほど、彼は摩れちゃあいないのだ。
小さく頷きながら、空腹を満たすべく鰻の串を頬張っていたのだ。
酔ったおじさんは、ここにはご飯がないことを伝えるのを忘れていた。
食べたければコンビニで買ってきて持ち込むのがここのルール。
小閣下は、蒲焼きの大をご飯なしで食べるのだった。
もしかしたら私はほとんど一杯と同じ量の、「焼酎半分」をお代わりをしたかも知れない。う〜ん、錯覚か。
そうそう、途中でメールがあって知ったのだが、
祭りの方の宴には、サッカー元日本代表のM園氏が来ていたらしい。大人はちょっと興奮気味の様子。
そんなことを思い出し、小閣下を従えた我々はタクシーで何十人もの酔っぱらいが待つ祭りの宴に向かったのである。
そこで待っていたのは、K田にいる時に電話をくれた、怒りに震えた親分だった。
ごちそうさま。
by mesinosuke
| 2009-10-16 12:25
| ▷unagi