2007年 11月 05日
S橋の人気ランチだそうだ H作
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S橋で所用を済ませ、十一時半過ぎ。しめた。では、かねてからお邪魔してみたかった店でお昼を取ることにしよう。ブラブラ歩いていくと、まだ暖簾は掛かっておらず、傍らに一人の男性が文庫本を読みながら佇んでいる。さては、開店を待っているのか。らーめん屋でもあるまいし、こんな状況に出くわすとは思わなかった。が、しかし、そう何度もチャンスがあるわけではないので、件の彼とは距離を取って、何となく待つことにする。すると、女将さんらしき人が中から出てきて、水を撒いたりするではないか。そこで思い切ってきいてみる。
「お店は何時からでしょうか」
「もう少し、お待ちください」と女将さんは、親指と人差し指の間にわずかな感覚をつくっていう。
やがて、暖簾が掛けられると、私たちもいそいそと店内に入る。
最初の彼はカウンターの右端に。私たちは左端に腰掛けることにする。荷物を後ろに置かせてもらって、一息つくと、ご主人が黙々と準備を進めている。女将さんも「よいしょ」などと小さな声で呟きながら、準備に追われている。
すると、サラリーマン風情の男性が一人カウンターに座る。
最初に出てきたのは、豆乳豆腐である。これにあらかじめ出された薬味と出汁を散り蓮華であわせて食べる。と、私は勝手が分からなかったので女将さんに聞いた。これが実に旨い。プロの出汁で食するとかように旨いものなのか。
ここで我慢できずに小瓶を所望する。銘柄を聞かれたので、Yビスを。
やがてお造りが出るエッジのきりりと立った赤身に鯛だったか。山葵は四角い山芋の上に盛られていて、最後はその山芋そのものを口中に放り込む。このお造り、一見すると凡庸な組み合わせだし、派手さもない。が、一切れ、一切れに確固たる存在感がある。鮮度もよいのだが、包丁仕事のよさを感じないわけにはいかない。日本料理とはげに凄いものなのだなと感じさせてくれる。
このあたりで後ろのテーブル席に二組のカップルが入る。その後も何人かの人がお店を覗くが、「ごめんなさい、一杯なんです」とその都度女将さんが謝っている。ふぅ、思い立ってその日に入れたというのは幸運だったのかもしれない。
天麩羅が揚がってくる。小瓶をお代わりする。大黒占地と、後は何だったか。ナッツのような、いや胡桃だったか、忘れてしまった。この天麩羅は残念ながら、余り私の好みではなかった。衣のありようがちょっと違うのである。
次に蒸し上がった鯛飯が出てくる。わずか一口程度なのだが、これが実に旨い。蒸された感じがなんともいえずに旨い。鯛の風味が全体から立ち上ってくる。
さて、いよいよ蕎麦である。一人前ずつ分けられた蕎麦は、G大のS古庵を思わせるが、蕎麦のテイストは正反対である。こちらは白く透明感がある。例によって、汁をつけないで食べてしまう。う〜ん、まずいということはないのだが、風味が今ひとつ感じられない。やや残念な印象だ。汁は蕎麦湯で楽しむ。これはよかった。蕎麦粉を溶いた蕎麦湯だが、このとろみのある蕎麦湯に出汁がバランスよくきいた汁がよく合う。
最後は、私にとって今シーズン初の柿である。シャキシャキッとした食感がはしりを思わせる。
一品一品をみると、とても量が少ないように思うのだが、最後にはけっこうお腹いっぱいになる。本当はビールではなく、お酒を合わせたかったなあ。
最後に、夜の話を聞く。
「夜は、ちょっと趣が変わりまして、グンとお高くなってしまうんです」と女将さん。
「お任せの懐石のようなスタイルですか」
「そうですね」
「じゃあ、夜もお邪魔できるよう、頑張って仕事します」
などといって、暇を告げる。
ごちそうさま。
2006、2005年の今日の記事はありません。
2004年の今日の記事はこちら>>>「奥のおばさんが喋りすぎ」
□□□きょうの「食」ヘッドライン・ニュース□□□
中国産混ぜたタケノコ水煮、「国産」と表示 神戸
(アサヒ・コムから)
「お店は何時からでしょうか」
「もう少し、お待ちください」と女将さんは、親指と人差し指の間にわずかな感覚をつくっていう。
やがて、暖簾が掛けられると、私たちもいそいそと店内に入る。
すると、サラリーマン風情の男性が一人カウンターに座る。
最初に出てきたのは、豆乳豆腐である。これにあらかじめ出された薬味と出汁を散り蓮華であわせて食べる。と、私は勝手が分からなかったので女将さんに聞いた。これが実に旨い。プロの出汁で食するとかように旨いものなのか。
ここで我慢できずに小瓶を所望する。銘柄を聞かれたので、Yビスを。
やがてお造りが出るエッジのきりりと立った赤身に鯛だったか。山葵は四角い山芋の上に盛られていて、最後はその山芋そのものを口中に放り込む。このお造り、一見すると凡庸な組み合わせだし、派手さもない。が、一切れ、一切れに確固たる存在感がある。鮮度もよいのだが、包丁仕事のよさを感じないわけにはいかない。日本料理とはげに凄いものなのだなと感じさせてくれる。
このあたりで後ろのテーブル席に二組のカップルが入る。その後も何人かの人がお店を覗くが、「ごめんなさい、一杯なんです」とその都度女将さんが謝っている。ふぅ、思い立ってその日に入れたというのは幸運だったのかもしれない。
天麩羅が揚がってくる。小瓶をお代わりする。大黒占地と、後は何だったか。ナッツのような、いや胡桃だったか、忘れてしまった。この天麩羅は残念ながら、余り私の好みではなかった。衣のありようがちょっと違うのである。
さて、いよいよ蕎麦である。一人前ずつ分けられた蕎麦は、G大のS古庵を思わせるが、蕎麦のテイストは正反対である。こちらは白く透明感がある。例によって、汁をつけないで食べてしまう。う〜ん、まずいということはないのだが、風味が今ひとつ感じられない。やや残念な印象だ。汁は蕎麦湯で楽しむ。これはよかった。蕎麦粉を溶いた蕎麦湯だが、このとろみのある蕎麦湯に出汁がバランスよくきいた汁がよく合う。
最後は、私にとって今シーズン初の柿である。シャキシャキッとした食感がはしりを思わせる。
一品一品をみると、とても量が少ないように思うのだが、最後にはけっこうお腹いっぱいになる。本当はビールではなく、お酒を合わせたかったなあ。
最後に、夜の話を聞く。
「夜は、ちょっと趣が変わりまして、グンとお高くなってしまうんです」と女将さん。
「お任せの懐石のようなスタイルですか」
「そうですね」
「じゃあ、夜もお邪魔できるよう、頑張って仕事します」
などといって、暇を告げる。
ごちそうさま。
2006、2005年の今日の記事はありません。
2004年の今日の記事はこちら>>>「奥のおばさんが喋りすぎ」
□□□きょうの「食」ヘッドライン・ニュース□□□
中国産混ぜたタケノコ水煮、「国産」と表示 神戸
(アサヒ・コムから)
by mesinosuke
| 2007-11-05 15:42
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