2010年 02月 19日
げに多きかな、週末の昼酒野郎たち。
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先に用事を済ませてしまう方がよいのだが、いろいろと物をもって飲むのはちょっと憚られる。というわけで、酒臭くならない程度にサクッと飲んで、それから用事を済ませようと計画する。
何ら迷うことなY家に突入すると、ほぼ満席ではないか。
カウンター一番手前では、焼酎の一升瓶をでんと据えて飲んでいる年輩の一人飲みのおじさんがいる。二席空けて右手には日本酒をじっくりとやっている三十代と覚しき男性。その間しか選択肢はない。私が会釈をして腰を下ろすと、一升瓶のおじさんがサッと自分の陣地をコンパクトに整え直し、「すみませんね」と当方に挨拶をしてくれる。
他の客につまみを運んできたおばちゃんを掴まえてサクッとオーダーしてしまう。
「モツ盛り、お新香、ウーロンハイ」と一気にね。
出てきた順番は、ちょうどその逆。
ウーロンは、お新香、モツ盛り。ま、当然そうなりますわな。
すると一升瓶おじさんが、
「串焼きは旨そうだねぇ。おれなんかさ、もう歯が駄目だから食べられなんだよ」
と話しかけてくる。こういう話の返答は難しい。
そんなことありませんよ、食べてみたらいかがですかというのもおかしいし、
それは残念ですね、なんて返答も相手は期待していないんじゃないかと思う。
そこで仕方なく「そうですか」とシンプルに答える。
すると彼はそれを皮切りにいろいろと話してくる。一人飲みで退屈していたんだね、きっと。
「お宅、ここはよく来るの?」
「いや、三〜四回目くらいでしょうか」
「いやあ、そんな頼み方じゃなかったよ。ベテランだよ、あんなオーダーするのはさ」
「そうですか。細かく頼むのが面倒臭いだけですよ」
そう彼の帰省の話も聞いた。
「女房の田舎が新潟なんだけど、ずっと帰ってなかったんだよ。だけどさ、義父さんが具合悪くなっちゃって、とうとう亡くなっちゃったわけ」
「それで二人して戻ったんだけど、ほら、包まなきゃいけないものもあるでしょ。それに二人分の往復交通費を合わせるとさ、十万なんてすぐ越えちゃうわけ」
鍋の話だって聞いた。
「こう寒いとさ、しょっちゅう鍋やるの。俺がつくる係ね。かんたんだからさ、鍋」
「うちの鍋はさ、ちょっと変わってて、食べながら味を変えるんだよ。水炊きみたいなものの途中で味噌を加えたり、醤油味にしたり。でもね、最後は絶対キムチ。これが旨いんだよ」
床屋の話も聞いた。
「今日はさ、床屋の帰りなんだよ。だから首筋が寒くてさ(笑)。いやぁ、安いよ。カットだけのヤツ。それで十分だよ。浮いた金でここで飲めるしね」
「俺の息子なんてさ、俺が三回床屋にいく間に一回も行きやしない。どうなってるんだろうね」
このおやじさんはどうやら、自分でも飲食店をやっているらしかった。
私はウーロンハイを二杯飲んだところでお愛想。
「なんだ、俺より後に来て先に帰っちゃうの」
「すみません、きょうは昼飯代わりなんで。この後、ちょっとS谷で用があるんですよ」
「どうもね。失礼しました。楽しかったよ」
それはどうも。
ごちそうさま。
by mesinosuke
| 2010-02-19 19:07
| ▷motuyaki