2008年 03月 06日

それにしてもおかしい。なぜHミドール、やっていないのか。ちなみにと思って電話を入れてみる。
「Hミドールでございます」
「あ、どうも。mesinosukeです」
「イェーイッ!元気ですか。結婚してますか〜あ」
「(どうしたんだ?いったい)なんか大賑わいだね。盛り上がっているの?」
「いや、普通ですよ」
「さっきちょっと覗きにいったんですよ。まだ開いてなかったからJが丘で時間をつぶしていたわけ。これから行きますから」
「了解。お待ちしてま〜す」
何やら解せないやりとり。おかしい。いつものK氏とは明らかに違う。もやもやっとしながらJが丘の街をHミドールへ向かう。
今宵二度目の階段上り。
ドアを引く。
「今晩は」
「いらっしゃいませ」
いつものK氏が現れる。何も変わったところはない。
カウンター一番奥に先客が二名。大きな声で話している。スモーカーなので、そこから一番遠い入り口すぐの席に陣取る。気がつくと「T陽に吠えろ」のテーマ曲がかかっている。何でまたこんな曲が。どうやら奥の客のリクエストらしい。K氏は、バーテンダーは世を忍ぶ仮の姿で本来はロッカーなのだ。関係ないか。
「何にしましょう」
「この前の二杯目をもう一度」
「はい、この前の二杯目ですね。かしこまりました」
何事もなくバータイムが始まる。
「どうぞ」と酒がサーブされる。さて、この前の二杯目、あっているか。
一口含む。うむ。
「これこれ、正解です」
K氏に安堵の表情が浮かぶ。
そして私は腑に落ちなかったやりとりを質し始める。
「さっきの電話、どうしたわけ?」
「え? さきほどの?」
「Jが丘にいて、これから行くって電話したじゃない」
「ええぇっ! あれmeisnosukeさんだったんですか」
「そうだよ」
「いやあ、知り合いの若い奴にnesinosukeというのがいまして、てっきりそいつが久しぶりに電話してきたのかと勘違いしました」
「なあんだ、そうだったんだ」
「結婚するって話は聞いてたんですけど、それから音沙汰なかったんで」
「だから、結婚してるか〜いって叫んでたんだ」
「失礼しました(恥)」
「今日のお勘定は安いね、こりゃ」
「いや、まあ、あの△*※□○」
以前、電話をもらったのに来なかったではないかとK氏に言われたことがあった。当方には電話をした記憶は全くなかったので、「私じゃないよ」と突っぱねた。もしかしたらその時も彼と私を勘違いしたのかも知れなかった。ま、今となってはどうでもいいけど。
「最後にこの前と同じone for the roadをもらいます。その前に、そこへのつなぎとして一杯」
「はい」
この一杯、名は分からぬのだが(というかここで飲む酒の名はほとんど覚えられないのだが)、やや軽い方向に流れて、薬草系ながらもちょっと違うかなという印象だった。
「この前、Hさんがいらっしゃいました」
Hさんとは私の叔父である。定年で退き、今は悠々自適の毎日であるはずだ。けっして金に困る境遇でもない。
「あ、そう」
「たくさん連れてきていただいて」
ふふ。その情景は目に浮かぶが、敢えて何も言わない。
「では、one for the roadを」
「はい」
するりと出てきた最後の一杯。
「残念でした。オン・ザ・ロックではなかったよ」
「そうでしたか」
とK氏は備忘録のようなものを繰る。
「へえ、そんなものつけてたんだ」
「ええ。あ、そうですね、前回はオン・ザ・ロックではお出ししてませんね」
「あの時は、いつものと違うものというコンセプトだったから、氷を入れなかったんじゃないかな」
「そうでした。オン・ザ・ロックの方がお好きですものね、いつも。あの時は敢えてそうしなったんですね」
その昔、ここでよくピンクジンを吞んでいた。オン・ザ・ロックにして。
そんな思い出話をしていると、やがてグラスが空になった。
ごちそうさま。



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by mesinosuke
| 2008-03-06 16:59
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