2009年 05月 22日
Sきを出て開口一番、
「ワインでも飲みに行きますか」と氏を誘う。
忙しく行き来する背広姿の男達の中を、
浮遊感いっぱいに私たちは歩き抜けていく。
目指すは、久々のTダンジョウである。
この店、分かっちゃいるのに、
酔って向かうと不思議と間違えてしまうことがある。
気をつけねば、とばかりに氏の少し先を慎重に歩く。
確かこの筋だと思って、早足になる。
あった、あった。建物自体が道路からセットバックされているので、
遠目に見ると、この店の存在に気づきにくいのだ。
氏を誘い込むように店の中に入る。
赤ワインをボトルで取ることにし、そのセレクトは氏に任せてしまう。
つまみは、ハモン・セラーノ。
それにパンがいつものように出される。
カウンターやや奥目に陣取って、
Sき評などを主たる話題に、盃を重ねていく。
今宵は、元い、まだ今夕というべきか、
なぜかハモン・セラーノが今ひとつである。
肉にある種の臭みを感じる。
ぼちぼちと客が入り始めた頃、
その昔、この店で見かけた老齢のジェントルマンのことを思い出していた。
スーツ姿にフェルトのハット。口髭を生やし、背筋はピンと伸びている。
足元だけが年齢に抗うことならず、やや覚束ない。
彼はグラスで赤ワインを一杯取ると、トルティージャを一皿所望する。
なかなかに速いピッチでグラスを空けると、グラスを挙げて同じものを。
どうやらここはよく来るらしく、自分の中でいろいろなことが定まっている風だ。
ワインの量、好きなつまみ、使う時間などなど。
トルティージャと二杯目の赤ワインを片づけると、
右手を軽く挙げ、開け放したドアから去っていった。
おそらくそれが彼の昼飯だった。
なかなかによろしい。ああなりたいものだ。
すでにそれなりの量のアルコール漬けになった頭の中で、
私は、そのジェントルマンに言い訳をしている。
「いやあ、まだまだです。酒に対する執着が断ち切れなくて。
愚鈍な若者のように飲んでまして、ここも四軒目です」
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
赤ワインのボトルが空いたところで、店を出た。
さすがに日は落ちて、風のニュアンスが変わっている。
件のジェントルマンにもう一度言い訳をしなければならない。
実は、この後、五軒目の店が待っていたのである。
ごちそうさま。
「ワインでも飲みに行きますか」と氏を誘う。
忙しく行き来する背広姿の男達の中を、
浮遊感いっぱいに私たちは歩き抜けていく。
目指すは、久々のTダンジョウである。
この店、分かっちゃいるのに、
酔って向かうと不思議と間違えてしまうことがある。
気をつけねば、とばかりに氏の少し先を慎重に歩く。
確かこの筋だと思って、早足になる。
あった、あった。建物自体が道路からセットバックされているので、
遠目に見ると、この店の存在に気づきにくいのだ。
氏を誘い込むように店の中に入る。
赤ワインをボトルで取ることにし、そのセレクトは氏に任せてしまう。
つまみは、ハモン・セラーノ。
それにパンがいつものように出される。
カウンターやや奥目に陣取って、
Sき評などを主たる話題に、盃を重ねていく。
今宵は、元い、まだ今夕というべきか、
なぜかハモン・セラーノが今ひとつである。
肉にある種の臭みを感じる。
ぼちぼちと客が入り始めた頃、
その昔、この店で見かけた老齢のジェントルマンのことを思い出していた。
スーツ姿にフェルトのハット。口髭を生やし、背筋はピンと伸びている。
足元だけが年齢に抗うことならず、やや覚束ない。
彼はグラスで赤ワインを一杯取ると、トルティージャを一皿所望する。
なかなかに速いピッチでグラスを空けると、グラスを挙げて同じものを。
どうやらここはよく来るらしく、自分の中でいろいろなことが定まっている風だ。
ワインの量、好きなつまみ、使う時間などなど。
トルティージャと二杯目の赤ワインを片づけると、
右手を軽く挙げ、開け放したドアから去っていった。
おそらくそれが彼の昼飯だった。
なかなかによろしい。ああなりたいものだ。
すでにそれなりの量のアルコール漬けになった頭の中で、
私は、そのジェントルマンに言い訳をしている。
「いやあ、まだまだです。酒に対する執着が断ち切れなくて。
愚鈍な若者のように飲んでまして、ここも四軒目です」
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
赤ワインのボトルが空いたところで、店を出た。
さすがに日は落ちて、風のニュアンスが変わっている。
件のジェントルマンにもう一度言い訳をしなければならない。
実は、この後、五軒目の店が待っていたのである。
ごちそうさま。
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by mesinosuke
| 2009-05-22 11:12
| ▷wine